こんな話も書けるのかって思った。それも気まぐれでこのジャンルも書いてみたレベルではなく、完成されている。肩の力を抜き、夢中で続きが気になって読む系の作品。読んでいてなんとなく手塚治虫の漫画や、ジブリアニメを想起した。

帯に「あなたの人生を変える一冊」という使い古されたうたい文句、あらすじを読んで、内容や方向性に大体の見当はついた。良いか悪いかは別として小説に暴力描写や性的虐待はマンネリするほど使われている。ハッキリ言って読む側として慣れてる部分がある。サド侯爵などのそれだけに特化した作品もいくつか読んできた。だが、結果的に私はこの小説を読んで泣いた。感動によってというのはあり得ないだろう。ヒロインに対しての同情・哀れみからだろうか。それも違う気がする。ただ感情を揺さぶられたのは間違いない。
帯にはこうも書かれていた。「あなたは打ちのめされる。2度と読む物かと思う。しかし2度3度と読み返して、友達に熱い口調で勧めたくなる」
確かに2度と読みたいとは思わない。だが、打ちのめされたのは確かだ。小説でこの感じを受けたのはいつ以来だろうか。ただ友人に勧めたいとは思わない。人によっては読ませるべきではないだろう。それこそ人生を変えてしまうことがあるかもしれないからだ。そしてそれが良い方向性だとは限らない。
この小説の評価は星5つとしたが、星1つでもある。

久しぶりに素直に小説を楽しめた。こんな一気に読めた小説は久しぶり。文豪の谷崎ってだけで肩肘張って読み始めたが、なんのなんの肩の力を抜いて一気に読めた。作品によって作風や文体が全然違うとは聞いていたが、こういうのも書いていたとは。
谷崎といえばエロイと言うの偏見にも似たイメージがあったのだが、この作品はなんか全体的に喜劇のように感じた。
しかしこういう女っているよなぁと言うか、女って怖いなぁと言うか、男って馬鹿だなぁと言うか。
これはハッピーエンドと言ってよいのだろうか。まぁ本人達が幸せならいんじゃないの的な。

小説の神様と言われた人の代表作。正直言って自分には文章が合わなかった。どうしても読み進めることが出来なかった。同時期にトルストイのアンナカレーニナを読み返したが、それもなかなか読み進める事が出来なかったのだが、それで理由が分かった。
どちらにも共通していること。どちらも著者に映像が見えすぎているのだ。登場人物の一つ一つの動作や心情が全て描かれている。読み手には行間を想像する隙間が全くない。
小説というのは描く物を選んで表現するものだ。その場の全てを書き記していたらそれだけでページが終わってしまう。
だが小説の神様と言われる両者はその選択が上手すぎて、必要な物が全て描かれている。その選択が完璧過ぎるのだ。その場の状況を全て説明されていると言うか。
もちろん読後に裏読みなどの想像の余地はある。だが基本的には小説の中に全てが文章として描かれていて隙がない。
その結果隙がなさ過ぎて個人的にはつまらないのだ。文章が無味乾燥なものに思えてしまった。これはきっと好みの問題なのだろう。
でも現代小説じゃこの表現方法なかなか出来ないよね。ていうかさせて貰えないんじゃないかな。どうしても長くなってしまうし。

バタイユからの延長で読んでみた。誤解を恐れずに一言で言えば、おっさんが性癖による願望を書き連ねた便所の落書き。
批判の意味で言ったんじゃないです。褒めても無いですが。取りあえず読んでても下半身が全く反応しなかったのでよかった。サドからすると損してるって話かもしれないが。

amazonとか観ると高い評価が多いなぁ。
端的に言うと中身は8割方著者の想像です。まぁ最初にフィクションって断ってるからいいんですが、どうも読んで勘違いしてる人も多いみたいで。「周りの人が野菜に見える」などの実際の少年Aの発言もありますが、母親や少年Aの人物イメージを固定してしまう様な台詞(実際はそんな事実は無い)をバンバン言わせ、行動させます。
一番気になったのは少年Aを多重人格者の様に描いている部分。それを軸としたもう一人の少年Aとの対立による自我形成、それがこの本のきもになってますが、そうだと言う確定した事実は無いわけで。マスコミのイメージしそうな犯人像、シリアルキラーを演出しているように思った。結局は神戸の事件を基にした完全なる小説です。ただ最後の実際の少年Aの証言を交えた所は、やはり引き込まれるものがありました。オリジナルなら凄いし、三島の金閣寺みたいにモチーフとするならいいですけど、ここまで大々的にドキュメンタリーみたいに煽っててのはどうかと。これを読んで神戸の事件をイメージするのは大きな間違いだと言うことは知っておくべきだと思います。それと14歳だから軽い罪ですむってやつ。それだけは想像で言わせてはダメだろうって。

何々をした。何々をしてこう思った。箇条書きのように延々とそういった文章が繰り返されて終わる。
当たり前だが著者に文章力など期待していない。しかし心情と言ったものが全くといって書かれていない。
最後に著者は「逃げる前も逃げた後も自分のことしか考えていなかった」と語る。それが分かっていながら、こういう本を出すというのは、何か裏の事情でもあるのか、全く反省をせず利己的に自分を偽っているに過ぎないのか。
多くの読み手が知りたかった事はこの本には書かれていない。著者が被害者のために出来ることは、罪を償うことと共に、自分がなぜ殺人にいたってしまったのか、同じ事件を起こさないためにはどうすればいいかを伝える事ではないだろうか。

命が・・・軽すぎる。
推理モノは特に詳しくは無いので、トリックの善し悪しは分からない。けれど石神がやるであろう事までは予想できた。しかしその後の部分に言葉を失った。
これだけ有名な作家さんで、これだけ有名な小説で、そんなんでいいのかと思った。
自分が泣きたいからドラマや映画を見て、明日には忘れる。深く物事を考えず所詮作り物だからと考える人にはいいかも知れない。

例えそういう事をしてしまう心理状態になったりする人間がいたとしても、それこそ人のためにというよりも、自分が良ければいいと言う行動そのものではないか。それが美しい純愛なのか。感動するものなのか。それは一方的に悪人として描かれた富樫のやっていた事と何が違うというのか。

推理小説で人が死ぬのに純文学なみに深い意味を持たせるのはおかしいのかも知れないが、ジャンルの問題で片付けてよいのだろうか。これが高評価という事に、今の時代の命の軽さを考えさせられてしまった。

仏教には聖書やコーランといった特定の聖典が無いので、入門書やらをかじった程度しか読んだことが無い。なので漫画としての感想を書かせて頂く。誰もが認める巨匠を批判したくは無いが、後半は明らかに失速して流しながら書いてるように思った。まるでジャンプで連載打ち切りが決まった漫画のような流れだった。
何度も中断されながら書いてるからかも知れないが、同じ条件でも火の鳥は素晴らしかったが、続き物となるとやはりモチベーションが続かないのか。後に二人は運命的な対決を~みたいな振りが何度もあるが、結果的に風呂敷広げてまとめきれなかった印象を持った。宗教と言うテーマ自体が難題だが、一番肝心な悟りを開く瞬間を、数年後に会ったらもう開いてたみたいな展開だったのには閉口した。この題材を選んだ時点で、それがキモでは無いかと。前半星5つ。後半2つと言う感想。

漱石の作品は一通り読んだが、その時代のあくまで大衆文学と言う感想を持った。その中で「こころ」は純文学に近い。内容的にも他の作品よりも深みを感じた。
しかし最後、Kがそれを決意した理由が、現代っ子の私には納得出来るわけが無い。感情移入のしようがない。
やはり漱石は良くも悪くもあくまでその時代を現す小説家だと思った。文章はもちろん素晴らしいが。

予備知識無く、タイトルに惹かれて購入した。筒井康隆的な面白オカシイものを想像したが、内容は全く異なっていた。
前衛的と言えばそうかも知れないが、内容的、特に後半は作家の病気がモロに出てる気がした。作者の自慰と脱線。もし計算して書かれたと作者が言えば、分からないこちらが悪いので納得しなければならないかも知れないが、正直文章が自慰過ぎる。
純文学の括りとも違い、どちらかと言えばやはり大衆文学よりの様に思うのだが、多くの人にとっては「何言ってんの?」って言う感想になるだろう。そこでそんな事考えねぇよって言う。作者の文章に自分がピタリと嵌り、酔うように読める人にとってはいいかも知れないが。

キリスト教には聖書があるが、仏教にはこれって言う定まったモノが無い様なのだが、この著が入門書として評価も高いようなので読んでみた。
基本的には俗に言う「悟り」って言う考え方が土台なのだと理解した。平たく言えば器が大きいというか、大局的な広い視野や考えで物事を考えると言うか。
色々と納得させられるものもあったのだが、そんなの考え方の押しつけじゃないかと思ったり、胡散臭い宗教勧誘そのものの言い回しがあったりもした。しかしながら得るものもあったし、これ一冊で評価出来るモノでは無いだろうとも思う。

面白かったのだけど、正直ガッカリした部分もある。
一番期待した戦いのシーンが殆どスカされている。血・肉躍る骨太のチャンバラ描写を期待して読んだのだが、殆どの結末が誤魔化されている。戦っていて次の話になると、それが終わってたりする。まともに戦ってちゃんとケリまで書いてるのって、それこそ最後の小次郎ぐらいしか無い気がする。そもそもそう言うシーンが少ない。心理描写が殆どだ。それは確かに素晴らしいと思ったのだけれど、なんかちょっと残念だった。

探偵小説というジャンルをうたっている通り、どんでん返しが幾度かあるのだが、全てが夢オチと言う卑怯なやり方であるのは如何な物だろうか。散々読まされて、今まで喋ったのは嘘だったとハッキリ言われたりする。最後の最後も嫌いじゃないが、アレだし。まぁ精神病って言う言い訳があるのだろうが。
古典にしては古語と言うより現代語に近く、文章としては非常に読みやすい。タイトル・背表紙・あらすじと、読む物が期待しているものはおのずと絞られると思うが、それについては期待を裏切らない内容だと思う。何より構成と文章が上手い。これはいらんのじゃないかと言う作者の遊びチックな所があったりもするが。
全体的にホラーと言うより悲喜劇に近いと感じた。
しかしこれが書かれた時代を考えると先見の明やらがあったのであろうし、表現といい、作者の想像力たるや凄いと思った。

戦闘シーンかっけー。ストーリー微妙。
幾ら何でも内容省略しすぎ。新しい巻になったらナレーションとダイジェスト映像だけでヒロインがさらわれてたりする。

どう考えても無駄に長い。必要の無い描写が殆どで、それが読者を攪乱するための文章と言うわけでも無い。文章もステレオタイプでいたって普通であり、取り立てて特徴や感心する表現も無い。
もっと濃縮した方が物語としても重量感が出たのでは無いか。
何より最後が尻つぼみだったのがいけない。ミステリーにおいてはそれがキモなわけで。最後の最後が一番ガッカリした。
展開に無理矢理感も多く、主人公の行動に理解できない部分も多かった。好みやら賞を取ったやら言われても厳しい評価をせざるを得ないと言う感想を持ったが、読みやすいとは思った。

理想だけど、やっぱり難しいだろう。奇跡が産んだ宝石箱のような時間だったんだと思う。

思春期という澄み切った水に墨汁を一滴たらす。その一滴は一瞬にして拡がっていく。読んでいてそんな印象を受けた。
有名な作品で著者の名前も知っていたが、読後この作品が処女作であり、18歳の作品だと知って驚いた。普通にすげぇ。これこそその時、その瞬間、その年齢でしか書けない小説なのでは無いだろうか。小説ってもの、文学って物はこうでないと。堪能させていただきました。

読みながら村上龍が好きそうって思ってたら、文末で解説していて笑った。文章や表現は上手くはない。と言っても19歳と言う年齢をかみすればしょうがないかと。
村上龍が、その時。その立場、その年齢でしか書けない小説と言っているが、 内容的には文章の勉強をしている携帯小説と言った感じであり、いずれにしろ芥川賞を受賞する程ではない。結局それに尽きる。芥川賞を受賞してしまったばかりにハードルが上がり、それほどじゃねぇよって言う評価になってしまう。ただ時事小説と言えばそうかも知れない。内容としても好みの分かれる作品だろう。
痛覚に訴える作品と言う印象を受けたが、表現力としては同時受賞の綿矢さんの方が上だったと思う。

非常に有名な作品。読んでみてまぁ普通というか、そんな言うほどかな…と思ったのだが、書かれた年数を見てビックリ。50年以上前ではないか。そりゃ凄い。
SFモノは発想が大事だと思う。だからこそ最初読んだ時に別に…って思ったのだが、50年前に書かれたとなると、当時としては、それは斬新だったのでは無いかと。著者の空想が時間を超えたって感じか。
ただ、文章としてはやはりさほどのインパクトなども無いので、3とした。

打ち切りだとか、観る前にあんまり良い評判や情報が無く、観る前に大分ハードルが下がっていたため「以外と良いじゃん」って言う準備をして観た。
批判するほどのアクも無いが、誉めるほどの特徴や要素も無く。
箸にも棒にもかからないとはこの事だと。別に信者では無いが、ガンダムと言う冠を付けるなら、それではいかんと思う。
いたって普通のアニメだった。

あらすじはモチロン知ってたけど、こんな内容だったとは(笑)。翻訳のせいかも知れませんが、会話中の表現や例えに笑ってしまいました。「なんじゃそりゃぁ」と何度か突っ込みたくなりました。ロミオもジュリエットも、純粋無垢かと思えばそうでもなく、思い通りにならない相手に「死んでしまえばいいのに」とかあっさり言ったりもします。まぁ人間らしいと言う見方もできますが。けして作品を批判するわけではないですが、個人的には悲劇じゃなくて喜劇だと思いました。

黒沢映画で観た羅生門。原作はこんなに短いモノだったとは。
内容は、短編集なので、表題の羅生門以外にも幾つかの作品が収録されていますが、取りあえず文章が古文で読みにくいです。最近の辞書だと載ってない用語なんかも出てきたりします。
内容に深さは感じますが、その辺のせいで、作者の意図や主張が理解しにくかったのがおしい。わざわざ古文を勉強してまで読もうとまでは思わんので。

歴史に残る文豪の処女作。著者の作品を読むのは初めてだったけれど、ロシア文学特有の、登場人物が多いうえに、その呼び名がしょっちゅう変わったりだとかの読みにくさは健在。
しかし、短編と言うこともあって比較的スラスラ読めた。内容は自伝的な作品と言うことで、日記のような感じで特に目に付くものはなかった。
しかし、最後の母が逝く場面の主人公の心情は見事だった。ああ、こうなんだろうなって言うのが伝わってきた。実体験を元にしている事もあるのだろうが。

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