妖怪アパートシリーズの外伝。
本編10巻で書かれている前半と、10年後の間の話がメインで描かれています。読者としては、その間に何があったのか気になる所ではあるので、この部分が読めて良かった、いろいろクリアになったという意味で、締めとなる1冊でした。
個人的には、千晶先生のファンなので、彼の活躍(?)が随所に見られて楽しめました。本編をもう一度読み返したくなりました。
まずは、だーっと読み進めてしまったので、細かい感想を、読み返したらまた書きたいと思います。ただ、その前に、本編を読み直しそうです。

2013年11月30日

読書状況 読み終わった [2013年11月30日]
カテゴリ 児童文学

大魔法使いクレストマンシーシリーズの一応5作目。
ここまで何冊かこのシリーズを読んであるからこそ楽しめる部分が沢山ありました。物語の設定的にここまでの5作品の中では一番好きかも。
またしても、ちょっと頼りない男の子が主人公ではありますが、頼りないけれど心はまっすぐで優しいのが良いです。そして、身近な人に酷い人がいて、勧善懲悪なのもパターンですが安心して読めます。

ネタバレの内容ですが、変化が起こるたびに、世界の様子が変わるので、想像するのが大変ではあるけれど、だからこそファンタジーの醍醐味があるように思います。また人物描写が面白くて、それも想像する楽しみがありました。
クレストマンシー城に来る前のクリストファーと、大人になったクリストファーしか知らないので、成長過程のクリストファーに会えたのは良かったです。ちょっと気障ったらしくて高慢なのが玉に瑕ですが、本質的にはミリーを助けようと頑張っている一生懸命な男の子だし、あの頼りなくて他力本願だった彼を思えば、成長したと思います。きっと悪い部分もこれから直して成長していくのだろうと思って、物語になっていない裏側に思いを馳せました。

シリーズの他の作品も、物語前半のペースが遅く、後半に向けてスピードアップする感じがありましたし、ラストの展開の面白さがあると思いましたが、この作品も、ラストの大団円に向けての展開にスピード感もあり、華やかさもあり、大掛かりなお芝居を観ているような感覚がありました。うん、アニメとかじゃなく、映画とかの実写で観たら面白いかも。他の作品より、前半の面白さが私にとっては大きかったです。

それにしても「風の脚」」とか「業の主」とかがイマイチ掴みきれませんでした。あれって、どういう生き物(生き物だかもわからないけれど)でどういう設定のものなのだろうか。もしかして、この作者の他の作品を読むとわかるのだろうか。
あと、本のタイトルの邦訳、巧いですね。これ「コンラッドの運命」とかだったら、ピンとこないし惹きこまれない気がします。訳者の作品への愛を感じました。

2013年10月14日

ネタバレ

大魔法使いクレストマンシーシリーズの一応4作目。
おぉ、こう来たか、という感じで、結構前半から楽しく読めました。時系列的には「魔女と暮らせば」より前の話なのですが、「魔女と暮らせば」を読んでいるおかげで、別の楽しみ方がありました。
どうして、この作品の男の子はちょっとこう頼りないのだろうかとも思いつつ、いろいろなことを考えて成長していく姿を楽しんでいたら、特に、問題勃発の後の成長ぶりが素晴らしく…。
個人的にはタクロイも魅力的なキャラクターだと思います。
女神もとても素敵な女の子で、でも、彼女って「魔女と暮らせば」でも登場した彼女ですよね。
そんな風に、いろいろな伏線が、シリーズ全体にわたって引かれ、回収され、という感じで、シリーズを早く読破したくなりました。
それにしても、「魔女と暮らせば」のグウェンドリンもそうだったけれど、親切そうな顔をして他人を利用して嵌める人がまた登場。反面教師なのかもしれませんが(多分、クリストファーはラルフ伯父からいろいろ学んだと思うし)、物語の中の毒だと感じます。勧善懲悪で終わって良かったです。

2013年9月28日

ネタバレ

大魔法使いクレストマンシーシリーズの一応3作目。
このシリーズをこの本で4冊読み、私達の世界の言葉でいうパラレルワールドでの出来事という世界観にもだいぶ慣れてきました。とはいえ、前半のゆっくりなペースから、後半の怒涛の展開、というパターンは、他の作品と共通していて、途中から惹きこまれて読んでしまいました。他のことが出来なくなる罠のような作品です(笑)。
前半、惹きこまれ方がゆっくりなペースなのは、舞台となるパラレルワールドがどういう設定なのか、読み進めていくうちに分かってくるという描かれ方のせいかもしれません。今回、召喚され…いや、呼び出されたクレストマンシー自身が、どういう世界かを生徒たちから情報を集めて掴んでいくのを読み、まさに読者も同じことをしているなと感じました。いやいや、クレストマンシーも大変ですね(笑)。
シリーズの他の作品も読むと、この作品に登場するクレストマンシーが誰で(クレストマンシーは役職名なので)、どういう人物かがわかってきます。そういう意味では、1作だけしか読まないのは勿体無いです。あの、「何を考えているかわからない目つき」とか伏線がありまくり(笑)。
ナンやチャールズ達のいる元の世界が灰色なイメージなのに比べ、ラストの世界が虹色な感じで、「魔女と暮らせば」や「クリストファーの魔法の旅」みたいに嫌な人物もそれほど出て来ず、読後感がなかなか良かったです。子供達の中に意地悪な子も出てきますが、そこは成長途中の子供達ですしね。
1つの作品も、後半に掛けて惹きこまれますが、シリーズとしても、何冊も読んでいくうちに「もっと次の作品を読みたい」と思うシリーズです。

2013年9月28日

ネタバレ

大魔法使いクレストマンシーシリーズの第2作目。
ロミオとジュリエットを彷彿とさせる作品で、1作目の「魔女と暮らせば」より、私は好きでした。魔法がお茶目だし(特にルチアの魔法とか困るだろうなと思いつつ笑ってしまいます。あと、紙製の馬とか…笑)、舞台となったイタリアのイメージなのか、明るい感じがしました。
戦争の影が掛かるので少し苦しい感じがする部分もありますが、子供たちが力を合わせて頑張る姿とかが私は好きです。
あと、「魔女と暮らせば」の最後の戦い(?戦いと表現して良いのかな)も華やかさがありましたが、この作品は、更に歌というツールのおかげで、更に華やかで良かったです。トニーノとアンジェリカの将来が楽しみ♪

2013年9月28日

ネタバレ

大魔法使いクレストマンシーシリーズの第1作。
世界観を掴むのに、ちょっと時間が掛かりましたが、途中から一気に惹きこまれて読んでしまいました。(お米を炊く火加減みたいな感じ・笑。)
最初の食いつきが悪かったのは、主人公キャットの頼りなさと姉のグウェンドリンのずる賢さや性格の悪さの所為な気がします。
キャットはかなり後半まで頼りなくて優柔不断だけれど、あの姉に懐いているわりには、心の芯の部分が汚れていなくて、それが良かったかな。
それに引き換え、どんどん性悪になっていくグウェンドリン。彼女の扱いを考えるとハッピーエンドなのかが微妙な気もします。あと、ジャネットもちょっと可哀想な気もします。クレストマンシーは、謎めいているけれど、もっとはっきりいろいろ言っても良いのに、と思ったりします。
そうは言っても、最後の総力戦とか、勢いがあって良かったし、クレストマンシーシリーズの序章という意味では、なかなか面白く読めました。
続きも読みたいと思います。

2013年9月28日

ネタバレ

「コンビニたそがれ堂」シリーズ1作目。もともとはポプラ社で発刊された児童書ですが、大人だからこそ味わえる良さがある作品でした。
たそがれ堂の狐の兄さん、どういう人(いえ、狐かな)なのか、とても気になります。
収録されているのは「コンビニたそがれ堂」、「手をつないで」、「桜の声」、「あんず」、「あるテレビの物語」。

「コンビニたそがれ堂」は、うんうん、あるある、こういうこと、と子供の頃を思い出し、ちょっと切なくなりながら読みました。ラストのまとめ方のこの時間などを越えた所が、現代風童話なのかなと思います。
「手をつないで」は、考えさせられる作品。児童虐待の負の連鎖って難しいです。
「桜の声」では、時空を超えて伝わるものについて考えました。
「あんず」は、泣いちゃう人が多いのでは…?切ないけれど、胸が温かくなる作品でした。
「あるテレビの物語」。昭和の香りが漂う作品でした。個人的には、これが一番ピンとこなかったかな。テレビだったからかな。でも、愛着のあるもの、大事なものはずっと大事にしていきたいと思わせられました。

2013年9月28日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2013年9月28日]
カテゴリ 児童文学

シリーズ5作目。
今回のメインの話は、おじいちゃんの過去の話と、晶子の話。

おじいちゃんの話は、えっと、うーん、まあ、こういう人物が出来あがるにはそれなりのドラマがあるのね、という感じでした。
香月日輪さんは、登場するキャラに詳細な設定というか裏設定をたくさん持っているので、それが垣間見えました。

晶子の話、というか、晶子の周りで起こっているいじめとか、同性愛とか…。いじめについては、これという正解がないからこそ現実の世界からなくならないわけで、この作品を読むであろう思春期の人々が何かを考える材料になれば良いのかな、と思います。
同性愛については…、うーん、ちょっと微妙かな~。大きな括りで愛について語れば、同性愛も一つの愛の形であって、それもありなのだと思います。他人を大事に思う気持ちは本当に大切です。ただ、世間的にまだまだ認知されていない部分も多く、偏見がないとは言えないテーマで、この小説をおそらく多く読む世代の一部では「萌え~」と表現されたりして、美化されているともいえるテーマだけに難しいというか微妙というか。小説だから綺麗にまとめるのもありなのだけれど、現実はそう簡単じゃない。なので、この作者の作風から言うとちょっと舌足らずな感じがしました。こういうテーマを扱ったことに意味があるのかな~。よくわからないです。
ということで、イマイチ踏み込み切れていない感、消化不良感が残るので、今回は星1つでした。

2013年6月30日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2013年6月30日]
カテゴリ 児童文学

シリーズ4作目。
4作目での大きな出来事は、猫の話と、後半の和人と晶子の話でしょうか。

猫の話のほうは、いかにも、な展開というか出来事というか、ちょっとそういう気もするけれど、人間のある一面にこういう思いがあるからこそ、世の中いろいろな事件が起こるのでしょうね。
そういう自分の心の中の暗い、いえ、黒い部分にのみ込まれること無く、生きていかなくては。香月日輪作品は、妖怪系の話も多いけれど、今回は(別に他の作品がホラーなわけではないけれど)前半のホラーチックなイメージから先の明るいまとめ方になっていて良かったです。

和人と晶子の話ですが。
一般に出来の良い長子がいると、下の子は自分で意識するしないに関わらず、少なからぬプレッシャーを背負ってしまうもの(らしい)です。
龍神と和人を比較したら、世間一般に出来が良いのは弟の和人でしょうが、人間的の成長という意味では龍神が先を行っています。優等生の和人は自分が優等生であるのに、龍神の人間的な成長をきちんと見ているのがエライ。日々を頑張っているからこそ、ミロワールが出てきてもあぁいう展開になったのだと思うので、彼にはエールを送りたいです。
晶子のほうは、えっと、彼女はまだこれからの部分も大きいけれど、それでも着実に人間的に成長していて、それが読む側も嬉しいです。
そして、その二人を必要以上に心配してしまう龍神がまた微笑ましく。
3人で助け合って成長していけると良いです。

2013年6月19日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2013年6月19日]
カテゴリ 児童文学

シリーズ3作目。
3作目と言いつつ、私の感覚では、1作目の設定をベースに2作目からシリーズスタートという感じがします。
同じ作者の「ファンム・アレース」シリーズもそうですが、1作ごとに登場キャラが増えていき、主人公の人間関係が広がるというか能力が増えるというか、RPGみたいな感じ?この作品では、一色雅弥が登場しました。

一色雅弥という出来過ぎなキャラを通して、人生を楽しむってどういうことかを見直しました。なんでも出来るから、なんでも持っているからって幸せと言うわけではない。この作者の別の作品でも出てくる言葉で「世界は広い」「人生は長い」というものがありますが、同じことを感じました。うん、大事なことだと思います。
人生って、自分で切り開いて見つけていくものなのよね、と改めて感じました。
日々の他愛もない事柄から嬉しさを感じながら、自分で自分の幸せを感じて、探していかなくちゃね。他人は関係ないです。

2013年6月19日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2013年6月19日]
カテゴリ 児童文学

シリーズ2作目。
1作目は1作目で完結しているのですが、「続編を」と出版社に言われて出版されたそうです。
なので、シリーズ2作目と言いつつ、むしろ、新章開幕というか、ここからシリーズ物として始まる序章という感じ。1作目とは同じキャラが登場するものの、全然違うタイプの作品だと思うので、1作目が良かったので期待している方にはオススメしません。
ここからは、龍神の成長物語というより、面白い(魅力的な?)キャラが登場し、そのキャラといろいろな出来事を通して、何かを伝えてくる、考えさせる物語だと私は思います。でも、登場するキャラはこの作者の好みのタイプか、典型的な嫌な奴かな(苦笑)。

2巻目での大きな出来事は、エスぺロスの登場、でしょうか、やっぱり。
彼女の大人なのか子供なのか分からないキャラは魅力的なのでしょうね。とりあえず、異世界の人なので、一歩引いた目線というか違う見方が語られるので、読んでいるほうも気付くことがあるような気がします。
龍神の少し達観した言動も良いですが、信久の苦労しているが故の明るさと逞しさも良いです。足を治す治さないのくだりでは、「どうしようもないと思っていることが簡単に何とかなると言われたら」と、自分のことのように一緒に考えてしまいました。こういうところで、あるべき姿を自然に描いているのが、この作者の作品の良い所なのかなと思います。

「僕らはまだまだ未完成品」って、言い訳ではなくて、前向きな意味で、良いなと思いました。

そう言っては何ですが、ファンタジーで良いけれど、設定として、お金が何とでもなって、万能な人がいるという点では、ん~、現実とはかけ離れているというか、現実世界のようでいて現実ではない、確かにファンタジーです。なので、そのつもりで読まないと、「世の中、こんなに簡単じゃない」と反感を覚える人もいるのかも?この辺の設定は、そういうものだと割り切って読まないと、という作品でもあります。

2012年7月20日

読書状況 読み終わった [2012年7月20日]
カテゴリ 児童文学

この作者らしい世界観と考え方が分かる作品でした。
自立と自由について、そして物の捉え方の柔軟さについて、考えさせられ教えられる気がします。
思春期やそのちょっと前の子供達にも分かりやすく書かれているので、一度読んでみると良いかな。大人は、つい自立しようとする子供から、ちゃんと子離れ出来るようにしなくちゃ、です。

大人になるとわかるのですが、学校で学ぶ事柄は結局は事柄でしかなくて、それをどう活かすかが本当の勉強だと、私も思います。そして、人生はいつも勉強だと常々思いますが、結局、自分の周りで起こる事柄から、何を感じて自分がどう生きるかを考えることが本当の勉強なのでしょう。

障がい者については、ちょっと偏った描き方をしていると思いますが、世の中にはこういう風に間違っている人が確かにいます。龍神のような行動は確かにきちんと伝えないと理解されにくいし、それに対するクラスメイトの対応も「ある、ある」と思ってしまいます。小学校高学年、中学生くらいの子供達には、この部分を読んで考えてもらいたいです。
いじめの仕組みについても分かりやすく書かれていて、優しさという言葉を盾にいじめをする、人間の善人性って・・・。ここは人間として間違えてはいけないと思います。
この作者の別の作品に『地獄への道は、善意で舗装されている』という言葉が出てくるのですが、うん、自分も間違えないで生きようと改めて思います。

龍神が自立していく過程は、小気味いいです。応援したくなります。
実際の世界で考えたら、確かに小学校6年生ではちょっと早いし、有り得ないと思うけれど、それでもいつかは人は自立しなくてはいけない。
ただ、実際には、気持ちの上では自立していても、完全に家族のしがらみから切り離されては生きていけないのも世の中なのですけれどね。それはそれで、別の話なので。
子供向けに書かれた作品に加筆修正して出版されたそうで、文庫以外でも出版されても良いのに、と思いました。

2012年6月24日

読書状況 読み終わった [2012年6月24日]
カテゴリ 児童文学

シリーズ第5作の下巻。
魔女アイガイアの城に到着したララ達一行は、城の奥へと進んでいく。
途中、まるでアイガイアの歪んだ精神を表すような様相の場所を通り抜けつつ、城の最奥、アイガイアの玉座のある間に到達した一行。
そこから、アイガイアとの死闘が始まる。
倒れそうになりながらも、そのたびに、それぞれが精一杯の力を出して闘うララ達。テジャの一族の助けや、ララの母の魂の力を借り、最後の局面に対した時、魔女アロウラの予言で触れられていた因果律の外にいるもの、予想外の白魔道士バビロンが登場。魔道士バビロンとララの力によって、グールの隠された力が解き放たれ、一時はアイガイアを倒したかに見えたものの、実は息絶えていなかったアイガイアに最終的にとどめを刺したのは、ララの命を懸けた行動だった。と言う感じの内容。

読み終えての一番の感想は、人の気持ちの強さ、でしょうか。
この作者さんの作品の女の子は前向きで強い子が多いですが、ファンタジックな世界観の作品でも同じで、結局は前向きな気持ちが人生を切り開くのだと感じます。この作品をよく読むような世代には、是非読んでこの先の人生を頑張って欲しいと思ったりします。
内容的には、4巻目辺りから、ずっと引っ張ってきたサーブルとグールについての謎が解き明かされます。とりあえず、サーブルにとってもグールにとっても良い転機になったようでなにより。
そう言ってはなんですが、ちょっとバビロンとララが霞む感じ(苦笑)。サーブルとグールは、結局はこの物語の鍵だったともいえるのでしょうね。
1巻目からの伏線が、ここでうまく全部まとまって、1枚の織物になったような感じで、この作者さんの他の作品よりまとまりが良い感じがします。
1巻目を読み始めた頃は、キャラクターの魅力で引っ張っていくタイプの本で、ファンタジーとしてはん~という感じでしたが、ラストのアイガイアとの闘いは(ちょっとご都合主義的なものを感じないわけでもないですが)各自の見せ場があってそれなりにファンタジックで、思っていたよりずっと良かったです。もう1回読み返したいと思う作品でした。

2012年6月16日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2012年6月16日]
カテゴリ 児童文学

シリーズ第5作の上巻。
血塗られた王家の最後の一人として『聖魔の魂』を持つ身であるララ。初代グランディエ王が自らの欲望と引き換えに子孫の魂を魔神ウェンディゴに捧げる契約を魔女アイガイアと結んでいたため、アイガイアは一族に呪いをかけ、聖なる力も魔の力も両方使える莫大な力である聖魔の魂を持つララの命と魂を狙っている。
これまでの旅の途中で仲間を得たララは、自らにかけられた呪いと、世界を氷に閉じ込め王と企む魔女アイガイアの野望を打ち砕くため、いよいよ大陸の北の大地へ足を踏み入れる。
その名も「最後(テロス)」という宿を後にし、ベルベル山岳地帯へ向かう一行は、「死の街(タナト・ポリオス)」では、男性陣は狂信者によって危うく命を落としそうになり、「黒い底なし」と呼ばれる地では浄化を求めてグールに集まってくる死霊達と対し、「蛇王の大渓谷」では協力して危ないつり橋を渡るもバビロンが危うく谷底に落ちそうになる。そのたびに、バビロンを始め、サーブル、グール、ナージスなどの秘めた力で切り抜けながら、ララ自身がアイガイアとの闘いに向けて、気持ちを強くしていく。という感じの内容。

この巻では、バビロンはもとより、サーブルとグールがなんだかカッコよかったです。危険に晒される度に明らかになるサーブルとグールの能力は、もう明らかに人間離れしていて(ってこの作品の登場人物はみんな人間離れしているというか、生粋の人間ではないのですが)、この2人の過去とかどういう人物なのかなどが気になります。ここにきて、これだけ彼らにスポットが当たるということは、何かの鍵を握っているのだろうなと思います。(作者がこの2人を気に入っているだけだったりして…?)
ララはララで、大事なものを持ったおかげで弱くなった部分が前面に出てきたりして、この本を好んで読む世代には共感出来るだろうと思います。そこを乗り越えていく強さが良いです。
物語を進めていく上で、ナージスが良い感じで普通っぽくて、彼の言葉で読者にとって物語世界が近く感じられるのではないでしょうか。
ここにきて、物語もクライマックスに向けて加速度を増している所為か、読む側もこの先はどうなるのか、気になって仕方ないです。

2012年6月16日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2012年6月16日]
カテゴリ 児童文学

シリーズ第4作。
血塗られた王家の最後の一人として『聖魔の魂』を持つ身であるララ。初代グランディエ王が自らの欲望と引き換えに子孫の魂を魔神ウェンディゴに捧げる契約を魔女アイガイアと結んでいたため、アイガイアは一族に呪いをかけ、聖なる力も魔の力も両方使える莫大な力である聖魔の魂を持つララの命と魂を狙っている。
これまでの旅の途中で、魔女ビベカの孫ナージス、賢者ナーガルージュナの弟子アティカ、そして竜族の姫テジャを仲間に加え、アイガイアを倒すため、天使召喚法を求めて隠者ノゴージャンのいるヴェルエドを目指す。
途中、蛇の女怪の棲む魔宮で、1巻で登場した黒い犬(殺人を専門に請け負う雇われ者)のサーブルとグールに出会う。という感じの内容。

サーブルとグールの再登場です。1巻では強い敵だと思ったけれど、ここにきて、彼らの秘密が見えてきます。
魔宮での戦いは、ん~、まぁこんなものかな。助かった村人がいたのは良かったけれど、死んでしまった人々の家族は、やっぱり辛いでしょうし、その辺の描き方はちょっと軽い気がします。でも、復讐しても死んだ人は帰ってこないのも事実で、その気持ちをどうするかに正解はないでしょうね。
サーブルとグールの過去はなかなか興味深いです。作者はこの2人、とっても好きなのだと思います。この辺の謎かけ具合にはまってしまうのですよね。
魔宮での出来事とサーブルとグールとの再会という出来事の所為か、ヴェルエドでのくだりの印象が浅くなってしまいました。こういうところを詳しく描くと、多分ファンタジーとしての質があがるのだろうと思いますが、作者はファンタジーを書きたいのではなく、書きたい話の登場人物がファンタジー的だったからファンタジーっぽい作品になったようなので、そこは求めなくても良いのでしょう。全体的に、RPGっぽくて、気軽に読めるのも良いところ。
巻を追うごとに仲間が増えてチームとしての能力が上がっています(こういうところもRPGっぽい?)。この能力をどう活かして魔女と対決するのかを楽しみにしたいと思います。

2012年8月3日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2012年8月3日]
カテゴリ 児童文学

シリーズ第3作。
血塗られた王家の最後の一人として『聖魔の魂』を持つ身であるララ。初代グランディエ王が自らの欲望と引き換えに子孫の魂を魔神ウェンディゴに捧げる契約を魔女アイガイアと結んでいたため、アイガイアは一族に呪いをかけ、聖なる力も魔の力も両方使える莫大な力である聖魔の魂を持つララの命と魂を狙っている。
ララは、魔女の情報を得るため、バビロン、魔道士ビベカの孫ナージス、竜族の姫テジャと共に、アマグスタにいる賢者ナーガルージュナに会いに行く。
途中、ハーゴの村では、黒魔道士を仲間に引き入れた盗賊から村を守るのに手を貸す。
そこで、ララは、ただの子供であり一人の女の子として素直になれる自分を確認し、自身もまた成長する。
アマグスタでは、ナーガルージュナが悪魔アロウラを呼び出し、呪いの謎と魔女を倒す方法を聞く。今のララでは、魔女には勝てないが、天使召喚によって魔女を倒せる可能性を見出す。高次元の霊的存在が地上で力をふるうには、その力を受け入れるだけの霊的に大きな器をもつ者に憑依しなくてはならないが、ララと同じく聖魔の魂を持つ竜族の姫テジャを依り童にすることを考え、天使召喚法を探すため、新たな旅を始めることになる。という内容。

2巻で登場したナージスがどんな味を出してくれるのか、楽しみにしていました。
ナージスの女性の好みが大人の女性で、“全体にむちっとした、化粧は少々派手でもいいからグッとくるような色年増”だなんて、面白いです。「おまっ…。可愛い顔してえげつないこと言うなぁ、オイ!どっちかってーと、それは俺の台詞じゃね!?」とバビロンが言っていましたが、私も言いたいです(笑)。ナージスがどんな人かじわじわ見えてくるのが面白かったです。
黒魔道士、白魔道士の捉え方は興味深いと思います。同じ魔法を使うものなのに、黒魔術は恐ろしいものだと人々が怖がる気持ちに付けいるのが黒魔術、という説明に、成程と納得。
ハーゴの村の話し合いの進み方や村人の考え方行動などもなかなか良いです。
ハーゴは、主教を中心に誠実で実直な人々がまとまっている村で、確かに理想郷かもしれません。
村が黒魔道士に襲われ森に逃げた女子供を追ってきた山賊と子供達が対峙する場面と、無事だった時の喜びあう姿に、同じ作者の『妖怪アパートの優雅な日常』8巻の宝石泥棒と田代ちゃん達の様子が重なりました。

2010年8月1日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2010年8月1日]
カテゴリ 児童文学

シリーズ2作目。
ストーリーのメインは、シャイハムス邸での出来事と、魔女ビベカの話の部分でしょうか。
バビロンがやけにララにドキドキしているのとか微笑ましいです(笑)。多分児童書のジャンルに入ると思うんだけど、作者も結構狙っているようで、ギリギリの線引きなのではなかろうか?笑。
二人を夫婦というララも可愛いです。というか、このコメディ風味な部分と、旅の内容の真面目な部分のバランス感覚がこの作者の魅力でもあると思います。
この旅の、人々との出会いや自分と違うバビロンの反応などを見て、大人びているララは確実に成長しているのでしょうね。
そして、一応大人のバビロンも、抱えている痛みを少しずつ乗り越えるララを見て、自分も癒され教えられる部分があるのだろうなと思います。うん、大切なものは手放しちゃいけない。
ビベカの孫のナージスが結構いい味を出しています。多分、見た目は美青年。でも、機械オタクで、弱いのか強いのか、掴みどころがない彼の活躍は、この先の旅に期待したいと思います。きっと、この作者のことだから、魅力的な子なのでしょうね。楽しみです。

2010年2月3日

読書状況 読み終わった [2010年2月3日]
カテゴリ 児童文学

「妖怪アパートの幽雅な日常」シリーズが面白かったので、同じ作者の別の作品を読んでみました。
ファンタジーは好きなので、魔法とか剣とかの出てくるこの作品、それなりに楽しめました。亜人種や人間がうまく共存している世界観とかがファンタジーらしいです。
「ナルニア国物語」とか「指輪物語」系のファンタジーだからか、ファンタジーとしては、ちょっと底が浅い感じがしなくもないですが、気軽に楽しめて良かったかな。
この作者の作品に共通する魅力だと思うのですが、登場人物がとても魅力的。
バビロンが、面倒だとかなんだとか言いながら、ララを大事にしているところとか、他人に優しいところとか、出生から辛い人生だったでしょうに、それを誰の所為にもせず運命としてあるがまま、まっすぐに生きているところとか。
そして、ララも重い運命を背負いながら、心美しく逞しく生きている姿とか。ララの中にあるアンバランスさも絶妙で、140歳の年の差を超えてバビロンがうっかり惹かれてしまうのも分かる気がします(笑)。
二人とも宿命を受け入れて、一生懸命生きている姿が素敵。
あと、「人間にまず必要なのは、基本的な幸せだ。それは、自らの手でつくりだすこと。自分たちで畑を耕し、収穫を喜ぶ。家族みんなが健康で、いっしょにいられる。その幸せは金では買えぬ。金で買える幸せは、そのもっともっと、ずっと後で良い。」結構大事なことだと思います。

2010年2月3日

読書状況 読み終わった [2010年2月3日]
カテゴリ 児童文学

『首斬り鬼』『魔弾の射手』『花妖』『百合』『寒椿』『桜』収録。
シリーズ第5巻で第一部が完結したこのシリーズの第二部スタート。
『首斬り鬼』
蒼龍の作戦がニクイです。「私には君たちを守る余裕がないんだ。」って…。そこに違和感を感じる椎名もまた…。
風魔が鈴の音を嫌うとは初めて知りました。お守りに鈴が付いていたりするのはそういう謂れがあるからなのでしょうか。勉強になりました。
蒼龍は相変わらず素敵です。必要な時には非情に振る舞う姿が素晴らしい。でも、その彼も、三人悪に掛かると「あっ、痛い!怪我人だぞ、私は!」とか言わされてしまうのね(笑)。
『魔弾の射手』
また新たな強い女性が登場。流華なんて、成長したらこんな感じになりそうです。今回は吸血鬼が相手とは、また話が大きくなりました。
三人悪とその仲間だからこそのアンデッドとの対決は、血みどろっぽい展開の中で、ちょっと心温まる感じ。最後のほうの目まぐるしい展開に弾きこまれました。
『花妖』
心温まる話でした。秦野有子の読んでいた本って、同じ作者の作品でしたね(笑)。こういう仕込まれた小さなネタがファンの心理をくすぐります。
『百合』
リョーチンがメインの話。心に鬼が棲む人を、今度は救えるといいね、リョーチンならきっと救える、と思います。
『寒椿』
えっと昔話でこんな風に椿が夢で何かを伝えてくる話を知っています。それだけ椿って霊力のある樹なのでしょうか。面白く読みました。竜也がまた頭が良くてカッコいいこと(笑)。これはてつしが一応メインの話、なのでしょうね。
『桜』
こちらは椎名がメイン(?)の話。ちょっと怖いし、悲しく切ない展開ではありますが、桜にふさわしい話でした。個人的に結構好きです。光伯父さんのこの先の人生が桜色になるといいです(笑)。

2012年8月21日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2012年8月21日]
カテゴリ 児童文学

『ひとりぼっちの超能力者』『最後の戦い』を収録。これにて第一部完結。
『ひとりぼっちの超能力者』は、竜也が大活躍。この作者は、自分の作品の中に好きなキャラクターがいて、彼はその一人かと思いますが、おかげで設定が細かい、細かい(笑)。本当に好きなのねと思います。
最後のほうの、竜也と三人悪の連携が小気味良くて、ぐいぐい引っ張られる感じがしました。大人の事情とか考えとかそれもわかるので、神野親分の行動もありだと思います。それも愛だし。そして、子供達の友情も勿論わかります。あと、隆海の兄も良い味出していて。基本、隆海は愛されていての騒動だから、読んでいて心地よかったです。超能力じゃなくても、他人と違うものを持つ人って、多かれ少なかれいろいろあるよね、と思います。この作者の作品って、「大人の事情はあるだろうけど、でも、本当に大事にしなくちゃいけないことは何か」を改めて考えさせるなと思いました。
『最後の戦い』は、ここまでの第一部のクライマックス。素直に面白くて、引き込まれて読み進めてしまいました。登場人物も豪華面々が勢揃いな感じ。やっぱり蒼龍は凄いです。妖アパでは凄い魔道士なのに、地獄堂での三人悪からの扱いってちょっとヒドイ(笑)けど、やっぱり凄い魔道士でした。あと、あの本が地獄堂にあるとは。これは本物のほうだよね、やっぱり。この作者の作品って、同じ時間軸じゃないけれどリンクしているものが多くて、それもファンの楽しみに一つかと思います。きっと蒼龍だけじゃなくて、本を扱う彼も行き来しているんだろうなと、地獄堂の蔵書の描写を読んで思うのでした。
物語のクライマックスらしく、どこがどういいとかそういう部分的なことじゃなくて全体的にすごく良かったです。西の院とか死神とかが単純に悪役なのも分かりやすくて良いし、だからこそ勧善懲悪で気持ちいい。大人向けの物語だと、悪いほうにも事情があってというものが多いので。
実はシリーズ第4巻で、ちょっと失速した感があったのですが、この第5巻を読んで、続きが楽しみになりました。

2012年8月21日

読書状況 読み終わった [2012年8月21日]
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『満月の人魚』『高速の魔』『SSS雪の窓辺に』『SSS聖夜』『SSS真夜中の猫』を収録。
『満月の人魚』は、牧原神官が大活躍。人魚の捉え方が大人っぽいでしょうか。個人的にはあまりピンとこない作品でした。
『高速の魔』は、現実社会でもよくある事件を思い出させるものでした。事件の解明にあたる過程がちょっと面白かったかな。最近、車の暴走による痛ましい事故が続いたこともあり、現実の事故での被害者や遺族の気持ちを考えさせられました。
事件解決の仕方が、三人悪らしくて良かったです。結構ハラハラドキドキな展開だったかな。で、裏にいたのがアレとは。
SSSでは、『聖夜』が切ないです。

2012年8月21日

読書状況 読み終わった [2012年8月21日]
カテゴリ 児童文学

『噂の幽霊通り』『森を護るもの』『神隠しの山』『魔女の転校生』『SSS蛍の夜』『SSS夏祭りの夜に』を収録。
全体的に、言い訳をし過ぎる現代の人々に、忘れてはいけないものを思い出させるものが多い感じがしました。
『噂の幽霊通り』は時折話題になる高齢者いじめの問題。これにはいろいろな側面があって、「たしかに理想はそうだけれど、現実はなかなか…」と思います。ただ、だからと言って、言い訳をしていてもいけないわけで、本当に大切な部分は何かを、人は考えなくてはいけないのでしょう。
『森を護る者』では、亜月カンナと拝征将、そして日向が登場。自然破壊と開発については、このシリーズでもたびたび取り上げられるテーマ。これも『噂の幽霊通り』と同じく、現実社会ではさまざまな問題があって、なかなか自然を大切にといいながら開発と言う名の自然破壊も進んでいて、どうにも出来ないでいるのが現実。でも、だからと言って、仕方ないから自然を破壊しても良いわけではない。そこを忘れないようにしなければと改めて思います。カンナと征将、特にカンナは素敵な女の子で、こう透明で虹色なイメージでした。日向も大変だったけれど、これからはカンナ達と三人悪という仲間を得て、新たな日々を生きて行って欲しいと思います。自然の中で沢山の小さな命と触れ合っていれば、その大切さを理解するというのは、「たしかに!」と思います。せめて言葉で伝えていかなければいけないです。
『神隠しの山』は、読み手によって、感じるのはいろいろかなと。“神隠し”の捉え方は面白いと思いました。昔からの言い伝えや伝統には意味があるのだから、自然への畏れや敬いを無くしてはいけないです。
『魔女の転校生』では、鳴神流華が登場。「うん、いるいる、こういう子!」と思います。知らないものは知らないと認める心、凄いものを凄いと感じる心、そういう素直さは、子供だけでなく大人も忘れないようにしなければと思います。世界をありのまま受け止めるって、言葉で言うのは簡単だけれど実際はとても難しい。この巻ではこの先協力し合える仲間を得て、あるものはあるとしっかり認められる彼らのこの先の活躍が楽しみです。
おまけの2作品は別の出版社から出ていた時には未収録だった作品。SSS(スペシャルショートストーリー)とは言え、特に『夏祭りの夜に』は、親としてぐっとくるものがありました。きっと明雄は幸せだったと思います。だから残された父母は、頑張って生きて行って欲しいと、切に願います。

2012年7月28日

読書状況 読み終わった [2012年7月28日]
カテゴリ 児童文学

『幽霊屋敷その一』『幽霊屋敷その二』『あの夢の果てまで』を収録。
『幽霊屋敷その一』は、養護教諭の仮住まいの家にまつわる話。首都圏ではあまり見かけないと思うけれど、少し田舎に行くと古い民家ってまだまだあると思います。その中にはこういう過去を持つ家ってあるのかもしれません。他の人と違うことで差別してはいけないと言いつつ、今の世の中でも実際には心の中にまだまだあるバリア。本当の意味でのバリアフリーな世の中にしていかなくちゃと思いました。大人に社会にきちんとした意識が足りないからいじめとかも起こるんだと思います。
『幽霊屋敷その二』は、お金に苦労しているクラスメイトと彼女の住む家の過去の話。バブルの時代の悪しき遺産としてありがちな話だけれど、私としては、お金があることが幸せではなくて何が豊かなのかを考えなくてはと思わせられる話でした。ただ、現実的には、お金はある程度は無いと、生活の苦しさから精神的に本当に追い詰められてしまうことはあると思うので、まぁ理想論とも言えるかも?でも、人間、お金があることに慣れてしまって「もっともっと」と思ってしまうので、何故にお金が必要かを忘れてはいけないです。
『あの夢の果てまで』は、もう、悲しいと言うか切ないというか…。家族は大事にしなくてはいけないけれど、いなくなった穴を埋められる強さも持っていなければ。ただ、いろいろな思いも由宇の真っ直ぐで透明な強さに救われました。どうか今度は幸せになって…と祈らずにはいられません。
ところで、蒼龍って、彼ですよね。あはは、妖怪アパートではその黒髪ですら商売道具でものすごい高値で売れちゃう彼、夕士や秋音ちゃん目線でみるとものすごい高い所にいる人なのに、三人悪の扱いときたら(笑)。作者の作品はあちこちリンクしているので、ファン的に楽しめます。

2012年7月29日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2012年7月29日]
カテゴリ 児童文学

以前、別の出版社から出ていた作品を完全版としてノベルスで復活。作者も気合を入れて作っているようで、期待しています。
1巻には、「地獄堂と三人悪と幽霊と」・「地獄堕ち」・「翳を食う」・「死に部屋」・「生霊を追って走る」の5話を収録。
イタズラ大王三人悪とかいうから悪い子かと思ったら、むしろ親分肌で硬派な番長キャラの主人公。イタズラはするけれど、人間として大切な優しさとか真っ直ぐさをしっかり持っていることに、大人としてハッとさせられます。
「地獄堕ち」のラストシーン、このそこはかとない怖さが児童文学のジャンルだなんてある意味、深い。
「翳を食う」はこの作者の作品の良世界の捉え方がよくわかる作品かと。五感を磨かないと向こうの世界との入口が閉じるって、なんだか納得です。“見えない=無い”のではないと思います。
五感を磨かないと向こうの世界を感じられない代わりに、逆に人間の心に巣食う翳の部分につけこまれるって、現代の犯罪に通じるものがあります。これも児童書ジャンルなのに、結構深いことを言っている気がします。
真っ直ぐに正直に誠実に生きることって、口で言うのは簡単だけれど、実はよく考えると難しい。人間は一生、これとの闘いかも。
「死に部屋」と「生霊を追って走る」は、かなりホラーテイスト。子供のころだったら、怖くて読めなかっただろうなと思います。結局一番怖いのは、物の怪ではなく、人間の暗い部分なのかな。だからこそ真っ直ぐ生きなきゃと思わせられます。

2010年1月5日

読書状況 読み終わった [2010年1月5日]
カテゴリ 児童文学
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